幸せそうな顔をみせて【完】
 いきなり『好き』だなんて副島新がいうなんて…一週間前までの関係では信じられない。でも、今は…心からの言葉と分かる。二人っきりの空間は少し甘さを増していて、見つめられた瞳は揺れている。今、何を考えているのだろう。


「飲み過ぎじゃない?」


「かもな。でも、来週からはまだ忙しくなるから、今週くらいは自分の時間を持ちたい」


 そう言いながら副島新はビールのグラスに口をつける。喉がビールの爽やかさを味わうかのようにゆっくりと動いていた。


 美味しい食事に美味しいビール。そして、ちょっとだけ甘くなった私の好きな人。仕事の疲れも一気に吹っ飛んでいくほどの楽しい時間に私は酔いそう。実際に少し、身体がフワフワする。これが火曜日でなければ、このままビールで最後まで行くけど、明日からの仕事を思うと…。飲みすぎる訳にはいかない


「それもそうね。でも、飲み過ぎないようにしないと明日に響く」


 ビールはこれで終わり、次からはウーロン茶のつもり。これ以上飲むと身体が絶対にきつくなる。ウーロン茶に切り替えてまた、ゆっくりと副島新と話をする。でも、色めいたことはなくて…。仕事の話ばかりだったけど、それはそれでいいと思った。


 一緒に居れるだけで楽しかった。


「そろそろ帰るか?」


 時間は11時を過ぎていて、もう一時間もしないうちに一日が終わる。そんな時に副島新が小さな溜め息と共にそんな言葉を口にする。もしかしたら私と同じ気持ちなのかもしれない。
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