幸せそうな顔をみせて【完】
 自分の部屋に入ると持っていたバッグをリビングのテーブルの上に置き、ベッドに服のままダイブする。少し時間は過ぎたし、お茶も飲んでいるから、酔いは徐々に醒めてきている。それでも精神的な身体の疲れは消えない。身体は動かないのに、視線だけで自分の部屋を見回すと朝、脱いでそのままの服が抜け殻のように床に丸くなっていた。


 帰って来てから片付けようと思ったのに、結局は片付けることも出来ずにこうしてベッドに転がっている。久しぶりに着た黒のスーツは脱がないと皺になるのに、それでも私は指一本動かすことが出来なかった。そして、自分の意思とは裏腹に涙が流れた。


 まさか、二股を掛けられるとは思わなかった。


 ただ、女の人といただけでこんな風に思ったりはしない。でも、二人のあの親密そうな雰囲気は深い思いがないと出来ないもので…。ふと、零した副島新の微笑みが胸を貫く。


「それにしてもなんて日なの」


 寝坊に始まった一日は…尚之と再会させ、副島新の二股発覚。そして残念なくらいにお酒に逃げてしまい、天井が回るほどのアルコールが身体を巡ってる。身体をベッドの上で転がし、スーツを脱ぐとそのままベッドの下に落とす。そして、身体くらいは自由にしてから私を目を閉じたのだった。


 アルコールは辛さを少しだけ慰めてくれた。でも、それは何の解決にもならない。副島新との関係はこれからどうしたらいいのだろう。考えても最悪な結果しか頭には浮かばなかった。
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