幸せそうな顔をみせて【完】
12 元カレと今カレ
 仕事の件を副島新に連絡しなかったことをどう思っただろうか?いつもの私なら何気なくメールもしていたのに、今日に限ってはそれも出来ない。副島新とのラインをどこに引いたらいいのか分からない。仲のいい同期で、恋人。出来れば将来は一緒にと思っていた。


 でも、今は…。私は副島新にとってどんな位置にいるのだろう。


 少し歩いて立ち止まると後ろを振り返った。すぐに振り向けなかったのはまだ昨日のことが私の中で燻っているから。このまま、何も知らないふりをして付き合うのか?それとも副島新に直接聞いてみるのか?


 でも、心のどこかに副島新は私のことを裏切ったりしないという気持ちも残っている。信じたいと思うのに、どうしても昨日の光景が目に浮かぶ。楽しそうな後ろ姿が…。忘れられない。そんな思いに縛られて苦しさが増してしまう。


『どうしていいか分からない』


 これが私の正直な気持ちだった。


 駅まで行き、ホームに入ってきた電車に乗るとわたしは入り口近くに立つと一日の終わりを迎えようとしている窓からの風景を見つめていた。そして、溜め息が止まることなく零れる。でも、今日の私はそれを止める努力をする気にはならなかった。


 自分のマンションに帰ると、私は携帯の電源を切った。そして、何も食べる気にもならなかったから、そのままシャワーを浴びてベッドに入ることにした。昨日の夜も殆ど食べれなかったし、今朝も食べれなかった。昼にサンドイッチを少しだけ食べたけど、また夜も食べる気にはならなかった。
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