幸せそうな顔をみせて【完】
 こんなに酷い自分の顔を見たのはいつ振りだろう。高校受験前にインフルエンザに掛かるという体験をした私は受験までに治るのかと心配になり、熱にうなされながら自分の顔を鏡で見て驚いたのを覚えている。あの時は熱で顔が真っ赤だったけど今は蒼白という感じ。色は違えど、顔色が悪すぎるというのは変わらない。


 あの時は寝ていればよかったけど、今は…。寝ているわけにはいかない。

 
 私は起き上がり顔を洗うと、化粧を始めることにした。この冴えない顔をどうにかしないといけないと思う私は念入りに化粧をすることにした。青白い顔を隠すためにいつもよりも多めに下地クリームを塗る。少しでも血色がよくなるようにとマッサージもしてみるけど、一向に顔色がよくなる気配はない。


 マッサージで改善が見られなかったので、隠すことにした。顔色の悪いのを隠すためにコンシーラーで目の下の隈を消し、冴えない顔色を誤魔化すためにチークと口紅はいつもよりも色味が濃いものを選んだ。アイシャドウもいつもよりも少し華やかな感じの色を使い、マスカラも丁寧に施す。


 いつも以上に念入りに化粧をした私は顔色の悪さを消すことは出来た。でも、心の奥底に燻る思いが表情を硬くする。一生懸命口角を上げると…。笑っているようには見えるけど、それでも、作られた笑いにしか見えない。


 でも、これが今の私にとっての精一杯。


 これ以上頑張るのは今の私には無理なことだった。


 
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