幸せそうな顔をみせて【完】
 バスルームから出てきた私を見ると副島新はフッと視線を逸らした。そして、テレビを見ながらビールの缶のプルタブに手を掛けたのだった。何か言うのかと思ったら、いきなり何も言わずにビールの缶に手を伸ばす。プシュッといい音がして、飲み口の所には細かく噴き出た泡が見えた。


 そして、それを形のいい唇に運ぶと、一口飲む度に喉が上下している。その様子を見て、本気で飲むつもりなのだと思った。ほぼ一気飲みのような飲み方に私は目を奪われる。さっきも結構飲んでいたのに、これから二次会という感じなのかもしれない。


 大歓迎をして欲しいとまでは言わないけど、いきなりの放置プレーには…。正直戸惑ってしまう。初めて来た場所で私はどうしたらいいのだろう?正直、付き合いだしてその人の部屋に来るというのはそれなりに覚悟を決めないといけないのかもしれないと思ってしたし、それでもいいと思っていた。


 でも、副島新の様子に自分の置かれた立場が分からなくなる。


 一応付き合いだした?のだから、傍に行くべきか、それとも付き合っても間もないから傍に行くのはまだ早いのか?例えば、ここが会社だったり、一緒に行った居酒屋とかだったら気にせずに私なら真横に座るし、メニューを開き、好きなものを勝手に頼むだろう。


 私と副島新は同期で二年間も一緒に過ごしてきた。だから、今までの心地よい距離は自分でも分かる。でも、今は今までとは違う。まだ現実味は沸かないけど、一応『結婚を前提としたお付き合い』が始まっていて、私は副島新の彼女?だと思う。

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