幸せそうな顔をみせて【完】
 会社に着くと今日も小林主任は一番先に来て仕事をしていた。そして、営業室に入ってきた私を見るとニッコリと笑う。穏やかな微笑みに私も自然に笑っていた。


「おはようございます」


「ああ、おはよう。今日は瀬能商事に行く予定だけど大丈夫か?資料とか出来ていたら持ってきて。始業前にチェックする。チェックが終わったら打ち合わせをしよう」


「はい」


 
 書類は昨日のうちに準備を終わらせていた。内容はいつもと変わらないけど、いつも以上に緊張しているのは私の中にある見栄なのだと思う。あの時、尚之との恋よりも仕事を取った私が中途半端な仕事をしているとは思われたくない。それに今回の契約の話はどう見ても同等とは言えないだろう。


 尚之は私がこの会社にいるからではなく、本当にウチの会社の商品を気に入っているからの話だと思う。そうであっても私にも譲れないラインはある。


 小林主任は私が用意した書類を見ながら真剣な表情を浮かべている。表情からはいいのか悪いのかさえ読み取れない。出来れば及第点であって欲しい。


「悪くないな。でも、もう少し高めで値段設定しておいて。最終的にこの金額で落ち着くかもしれないけどな」


 小林主任はニッコリと笑いながらギリギリのラインをついてくる。私がいいと思ったのよりもはるかに高い金額を設定する。


「大丈夫でしょうか?」


「ああ、大丈夫だよ。ウチの商品は抜群の出来だから」
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