幸せそうな顔をみせて【完】
 小林主任が離したくなくて、婚約で縛るという彼女はどんな人なんだろう。私の想像がどんどん膨らんでいく。でも、フッと我に返り副島新のプロポーズの言葉を思い出してしまった。思い出さなきゃいいのに、自分で思い出して自分で傷ついている。


「彼女さんのこと好きなんですね」


 いつもは仕事に頑張っている小林主任の垣間見えたプライベートな部分は正直、ホッとさせた。仕事に関しての小林主任は仕事中毒ではないと思うくらいに仕事に打ち込んでいた。そんな姿よりも今の方が私は好きだった。



「もちろんだよ。ずっと、彼女が帰ってくるのを待っていたんだ」


「遠距離恋愛だったのですか?」


「そうだよ。二年前に彼女がフランスに行ってずっと」


 二年間の遠距離恋愛って凄いと思った。私は時期的なものもあったかもしれないけど、それでも半年も持たなかった。恋愛と仕事を両立出来なかった。私はあの時仕事を取ったけど、小林主任は仕事も恋愛も諦めない。


「寂しくなかったですか?」


「寂しいと思う日もあったけど、頑張っている彼女のことを見ていたら俺も頑張らないといけないと思ってた。彼女にはとっても手ごわいお兄さんがついているから、俺は一生懸命に頑張らないといけないんだよ。まだまだ頑張らないと彼女の前で俺は霞んでしまう」


「そうなんですか?私から見ると小林主任は凄いと思います」


「ありがとう。でも、本当に凄い人はいくらでもいる。俺も憧れるくらいな人なんだ」


 小林主任を霞ませるほどのお兄さんとはどんな人なのだろう?そんなことを考えていると瀬能商事に着いてしまった。
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