幸せそうな顔をみせて【完】
 もしも、この状態に副島新が遭遇したらどうなるのだろう。私は正直、逃げたい。でも、副島新なら自分の持てるだけの知識を駆使して目の前にいる人をその魅力で捻じ伏せるだろう。あくまでも優しくその人の意思に沿うようにしながらもきっと自分の思いのままに持っていくのだろう。


 同期で同じ部署に配置され、私の目の前にはずっと副島新の背中があった。いつか、その背中を追い越して前に行って、振り返りその真っ直ぐな顔を見たい。その時になるまで私は必死に走り続ける。追いつけないかもしれないけど、置いては行かれたくない。そんな思いをずっと抱いてきた。


「では私の方から説明させていただきます」


 そんな私に言葉で始まった商品説明は緊張に包まれたものだった。説明をし始めた私の横には小林主任というしっかりとして私が躓きそうになったら引っ張って行ってくれる力強い手がある。だから、自分の持てる限りの力で説明をする。


 言葉の端々に頷く尚之の姿があって…。私は……最後まで自分だけで説明をすることが出来た。


 説明を終えると応接室には沈黙が流れる。そんな中、口を開いたのは尚之だった。尚之の思っていた商品と私の会社の商品はどうだったのだろう。自信を持って説明はした。今の私にこれ以上は無理。


「いい商品です。前にこの商品のことを知った時に魅力ある商品だと思いました。で、しばらくしてそれが瀬戸の会社の商品と知り、これは詳しい説明を聞きたいと思いました。正直、ウチの会社で取り扱いをしたいです」
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