幸せそうな顔をみせて【完】
 私が見た『志摩子さん』はどう見ても二十代後半か三十代前半だと思う。すらっとした姿はモデルのようだし、雑誌から抜け出してきたのではないかと思われるスタイリッシュな雰囲気を漂わせていた。姿だけでなく顔もとっても綺麗で、笑った顔がとっても綺麗なのに可愛らしい感じで魅力的だった。


 初めて見た時はピンストライプのダークグレーのスーツを綺麗に着こなしていたし、二回目に見た時はアクアマリンの爽やかな身体のラインを綺麗に魅せるワンピースに白のカーディガンを羽織っていた。


 正直、敵わないと思った。綺麗過ぎた。


 そんな人が副島新のお母さんだなんて信じられない。顔も似てないし、雰囲気も違う。でも、副島新は嘘を言うような人ではない。考えれば考えるだけ混乱する。


「とりあえず仕事を終わらせないと」


 頭を切り替えるかのようにブンブンと振ってから、ここに来た目的…資料を用意することにした。資料をそろえるのに時間は掛からなかったけど、私は自分の中の揺れる心を平静に保てるまでかなりの時間を要し、営業室に戻った時には既に副島新の姿はそこにはなかった。


 居ないことに淋しいと思う反面、ホッとした。今は何を話していいのか全く分からない。志摩子さんが副島新の実の母親というのは無理がある。美魔女というには難しいくらいに若い。


 私は考えても仕方ないので、取りあえずは仕事に励むことにした。でも、前と違うのは…苦しくなるほどの胸の痛みがないということ。それだけは自分の気持ちをぶつけた甲斐があったのかもしれない。


 
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