幸せそうな顔をみせて【完】
 さっき、副島新が言った中にはなかったけど水のストックくらいはあると思った。ウィスキーを飲むなら水割りにするために水はあるだろう。なければ水道の水でもいい。


「ん」


 副島新はソファから立ち上がると、缶ビールを持ったまま、フローリングにペタンと座っている私の横を通り過ぎ、キッチンにある冷蔵庫のから水のペットボトルを取りだした。そして、ゆっくりと私のところまで歩いてきて、私の横に座ると、フッと私の目の前にペットボトルを差し出したのだった。


 私が良く飲む水のペットボトルだった。


「ありがと。私、これ好き」


「ん。知ってる」


 私がペットボトルを受け取っても副島新は私の横から立ち上がることはなく。私の横に座り、ビールを飲みながらテレビを見ている。さっき座っていたソファには誰もいない。副島新の部屋のソファは三人掛け用の大きなものだった。人が寝ることさえできるのに、何で床に座るのだろう?


「ソファに座らないの?」


「葵がここにいるから」



 私がここにいるからって…。そんな風に思うなら私がバスルームから出てきた時に何か声を掛けてくれたら良かったのにと思う。缶の傾き具合からしてもうそろそろ一本飲み干していて、私なんかどうでもいいのかと思っていた。でも、もしかしたらそうではなかったのかもしれない。



「私のことなんかどうでもいいと思っていた」
< 25 / 323 >

この作品をシェア

pagetop