幸せそうな顔をみせて【完】
「怖さって?」


 あんな優しそうな人のどこが怖いのだろう?副島新の勘違いじゃないのかしらとさえ思った。


「志摩子さんはゼミの助教授である俺の父親をずっと好きだったらしく。俺は近づくためのダシってこと。家庭教師の一番最初の日に言ったのが『私、あなたのお父さんが大好きなの。だから、協力して貰うから』。正直、ここまで自分の気持ちにハッキリしているのは気持ちいいと思った。

 でも、俺はもっと普通の子がいいとも思った。志摩子さんはあの清楚に見える外見からは全く分からないけど、いわゆる肉食系だし、自分の生き方にプライドを持っている人だから凄くモテてたみたい。でも、他の男は全く眼中になく、バツイチの親父にアタックしまくりの上で結婚した。で、必然的に俺の母親になったというわけ」


「なんか凄い」


「だよな。自分に素直で努力家のところは尊敬している。志摩子さんは一時期はモデルの仕事もしていたけど、今は女性誌の編集をしているんだ。今日も締め切りの記事を待っている間に葵に会いに来たんだ」


 元モデルなら、あの綺麗な姿も納得だった。


「そうなの。話してくれてありがとう。ずっと、もしかたら私は浮気相手なのかもしれないと思っていた。あんなに綺麗な人なら敵わないって」


「そんなことない。俺には葵が一番だ」


 そう言うと副島新はテーブルの上に置いていた私の手をキュッと握った。そして、右手の薬指に嵌めているピンクサファイヤの指輪をゆっくりと撫でたのだった。
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