幸せそうな顔をみせて【完】
「で、今日は俺のマンションに泊まるよな。金曜日だし」


 そう言われて、平日は仕事があるから泊まらないけど週末は一緒にって話はあったけど、激動の一週間で完璧に忘れてしまっていた。志摩子さんのことは私の勘違いだけど、この一週間で私の気持ちが擦り切れるくらいに疲れたのは間違いない。それにさっきまでの切なげな表情はどこに行ったかというくらいに消えてしまい、ここにいるのはいつもの副島新だった。


「忘れてたって言ったら怒る?」


「怒るわけないだろ。顔色も良くないし、調子悪いんだろ。俺の部屋でゆっくりすればいい」


 俺の部屋っていうけど、完璧に忘れていた私が副島新の部屋に泊まる用意しているはずもなく。一度自分のマンションに戻ってから、副島新のマンションに向かう方がいい。大好きな彼の前では少しでも可愛い自分でありたいと思うのは私の身勝手だろうか?


 部屋着はいつも通りのではなくて、少し前に買ったばかりのシンプルだけどちょっと女の子らしいものにして、下着も可愛いものがいい。


 心のモヤモヤが少し晴れた今、少しでも早くキュッと抱きしめて安心させて欲しい気持ちもある。でも、着替えも用意してない状態だから仕方ない。頭の中で自分のクローゼットの中を見繕い、それなりに副島新の部屋に持ってくる物を決めていく。


「でも、何も用意してない。一度、自分のマンションに帰ってから来るから」


「それは心配ない。ほら、帰るぞ」

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