幸せそうな顔をみせて【完】
 素直に自分の気持ちを言った私に副島新は優しい微笑みを向けるとゆっくりと立ち上がった。そして、私の手を引きながら少し人の疎らになったホームを歩く。そして、さっきの満員電車に乗っていた人もいないから楽々と改札を通りぬけることが出来た。たったちょっとの時間なのにこんなにも違う。


 そして、副島新は駅を出ると私や副島新のマンションに向かってでもなく、たくさんの店が並んでいる場所でもない方向に私の手をキュッと握ったまま歩き出したのだった。この先にあるのは住宅街くらいで食事が出来るような店はない。それなのに副島新は真っ直ぐにその道を歩いて行く。


「どこに行くの?」


「スーパー。葵が食べれそうなのを買いに行く」


 確かにこの先の住宅街の奥には夜間でも開いているスーパーがある。そんなに大きな店ではないけど、住宅街にあるからか夜でもかなりの客足を誇っている。


「ありがと」


「ん」


 スーパーへは駅から歩いて10分くらいの距離だった。この店に来るのは初めてではないけど、こんな会社帰りに来たことはない。普段はコンビニとかで買い物を終わらせるからスーパーには行くことがなかった。だから、スーパーの存在すら忘れていた。


 店構えは小さいけど、品揃えは充実している気がする。確かに大型のスーパーには負けるけど、普段の生活に必要なものは揃いそうだった。でも、私は自分が何を食べれるかすら分からない。


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