幸せそうな顔をみせて【完】
「何にする?こういう時っておかゆとかがいいわけ?」


 おかゆ…。病気の時にはレトルトのおかゆを食べたことがあるけど、今はそんな気分じゃない。食べれないことはないと思うけど、この初夏の暑さの中におかゆという選択肢は薄い。もう少し喉越しがツルンとしたものが良かった。スポーツドリンクとかだけでもいいけど、それは却下されそうだったので、とりあえず目に付いた棚に並んであるゼリーを言ってみた。


 冷蔵の棚の中には冷たく冷やされたフルーツがたっぷり入ったゼリーが並んでいた。コンビニにもあるけど、普段は素通りするけど、今日はそれが目に映る。色とりどりのゼリーは何時にも増して美味しそうだった。


「ゼリーが食べたい」


 私がそういうと、副島新はクスクス笑う。


「ゼリーも買っていいから、まずは何かご飯になるものを食べないと元気にならない。って言っても俺はそんなに料理は上手くないから期待するなよ」


 副島新に作って貰うなんて考えもしてなかったから、ちょっと面食らう。でも、器用な人だから料理くらいは最初は慣れなくても慣れたら私よりも上手に作るのではないかと思う。


「期待する」


 もしも、副島新が私のために用意してくれるなら何でも美味しいと思う。優しさというスパイスがきっと美味しいものを食べさせてくれるはず。


「葵の期待がマジで怖い」


 そう言うと副島新はまたクスクスと笑ったのだった。



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