幸せそうな顔をみせて【完】
 社内でも商品知識の勉強会はある。前の商品と比較しての改善点を中心に勉強していく。でも、私たち営業に与えられる知識は客先での短い時間で興味を引きつけるようなものでしかなく、微細に至るまで数値を追い求めたものではない。それは仕方のないこと。


 でも、今日の中垣主任研究員の説明は時間は掛けてないのに私たち営業がする説明よりも内容の密度が深い。契約も大事だけど、中垣主任研究員の説明は自分が開発した商品への深い思いが籠っているからか、自信に満ち溢れていた。


 私は今まで何をしていたのだろう。そんなことを思う。


 目先の数字に囚われ、自社の商品がどのくらいに素晴らしいものかを分かっているようで分かってなかった。新商品も何もかも…数字が取れるものとしか思ってなかった。全ての営業がこんな風に自社の商品に熱意を持って営業に回ることはないだろう。


 私は自社の商品の良さをもっと知りたいと思った。その知識を客先で説明する時間はないかもしれない。でも、自社の商品の良さを知っていればもっと違った形で勧めることが出来るだろう。そして、中垣主任研究員のように自信を持って仕事に臨めるだろう。


「私たちが開発した商品は貴社にとってお役に立てるという自信があります」


 中垣主任研究員の言葉はそれだけの思いが込められている。



「終わったみたいですね。では、一か月後にもう一度お伺いしますので、それまでに検討をよろしくお願いします」
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