幸せそうな顔をみせて【完】
 何も言わないマスターの前で私はオレンジジュースを飲みながら自分の心の中の整理をしていた。冷静に考えれば本社営業一課に転勤というのは営業に携わる者にとっては栄転であり、自分のことを会社が最大限評価してくれたということになる。同期でも一番の成績を誇る副島新ならその資格も実力も十分だった。どんな場所かは想像出来ないけど、それでも副島新なら十分に活躍できると思う。


 同期としては羨ましいと思う反面、本社営業一課で頑張って欲しいと思う。でも、私の個人的な気持ちとすると複雑だった。一緒にいて、いつから好きになったのかなんてハッキリはしていない。気がついたら好きになっていた。そして、あの金曜日の夜に…。


 副島新のプロポーズめいた言葉から私との恋は始まった。


 仕事の面しか殆ど知らなかったけど、プライベートでの面を知る度にもっと好きになって、俺様で強引なのにとっても優しくて思いやりがある。尚之と別れた理由は遠距離恋愛になった上に仕事をお互いに選んでしまったからだった。


 では今度も仕事を選んだら私はあの時のようにこの恋も失ってしまうのだろうか?恋も仕事も両方欲しいというのは我が儘だと思うけど、私はどちらも欲しい。


 仕事を覚えてこの頃は楽しくもなってきている。これからは小林主任の言っていたように既存先を大事にしながら新規先の開拓も始める。大変だろうけどきっとやりがいもある。そんな私が今、仕事を辞めて副島新について行って後悔はしないだろうか?
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