幸せそうな顔をみせて【完】
「いつからそんなこと考えていたの?付き合いだしてまだそんなに経たないのに」


 あの飲み会からまだ二週間しか経ってない。それなのに今は結婚の話が出ている。副島新の私と『結婚して幸せになりたい』という言葉から始まったこの恋だったけど、好きを重ねていった先に結婚というものがあると思っていた。


 転勤というのがなかったら、私は副島新と時間を掛けて恋を育んで行ったと思う。でも、今は…自分がプロポーズした手前、そんなことをいうわけにはいかない。勢いが付き過ぎているような気がしてならない。このまま一か月もしないうちに私は副島新と結婚していそうだ。


「葵を好きだと思った時からずっと結婚のことを視野に入れていた。だから、別に付き合った時間が短かろうと関係ない。付き合った時間は短いけど、一緒に机を並べて仕事して、一緒に食事に行って飲みにも行った。俺はずっと葵のことが好きだったし、葵も俺のことが好きだった。
 だから付き合った時間っていうのは短くない。それに俺が本社営業一課で仕事に頑張っているのに、いきなりお見合いされたり、元カレに持っていかれるのは困る」


 お見合いはともかく元カレというのが…。尚之のことを全く気にしてないと思っていたし、知らないと思っていたけど、本当は気にしていたんだと思った。


 そんな副島新が愛しくなる。



「新の言うとおりだね。時間は関係ないかも」


「だろ。さ、話はこの辺でいいかな。俺、今、葵を抱きたい」


 それは私も一緒だった。もっと深く副島新を愛したい。
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