幸せそうな顔をみせて【完】
 あの日、また平日なのに泊まってしまって、副島新の部屋から自分の部屋に戻り、出勤した。私よりも後に来ると思っていた副島新は既に出社しているみたいで、机の上のパソコンは開いたままになっていた。でも、本人の姿はない。


 自分の席で仕事を始めようと用意をしていると、奥の会議室から副島新が出てきて、その横には小林主任の姿があった。二人の視線は私に注がれ…。


 もうこんな朝早くから副島新が動いたのだと分かった。


 元々、仕事の段取りもよく、頭脳明晰な副島新の考えなんか私には想像もできるわけでもなく…。副島新と入れ替わるように小林主任に呼ばれて聞いた話に驚いた。仕事が早いのは分かるけど、これは早すぎだろう。出社してすぐに小林主任に結婚の報告をしたのだろうか。私と副島新の関係を薄々知っていた小林主任は満面の笑みを浮かべながら私に話し掛けてきた。


『さっき、副島から聞いたけど結婚することになったらしいな。おめでとう。結婚すれば、しばらくは単身赴任にはなるが、ウチの会社の方針で出来るだけ近くの職場で働かせるようにはなっているから安心していい。営業課は無理かもしれないけど、半年後には瀬戸さんにも辞令が出ると思う」


 ただ、一緒に居たい。遠距離恋愛は無理だし、別れたくないというだけで選んだ結婚という道。でも、それがこんな風に波及するとは思わなかった。


『籍をいれても旧姓で仕事をする方向でいいかな?』


 そんなことまで私は考えてなかった。それに、急に未知と香哉子が私にメールを送ってくる。

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