幸せそうな顔をみせて【完】
 居酒屋には私と副島新以外の四人は既に来ていた。


 仕事が忙しいのではないかと思うのに、この出席率に驚く。未知と香哉子はともかく、他の二人の男の同期は仕事をどうしているのだろう。成績はいい方だから手際よく仕事をこなしているのかもしれない。テーブルの上には既にいくつかのビールの空のジョッキがあるから、私が来る前から盛り上がっていたのは見るだけで確実だった。


 居酒屋に入ってきた私を見ながら、四人の視線は私に注がれ、その好奇に溢れた瞳から逃げられない気がした。なんでこんなにやる気に溢れているのだろう。


「葵。こっち」


 私が動かないのに痺れを切らしたのか香哉子がテーブルから立ち上がり私の方を見つめ手を振っている。そんな姿に溜め息を零しながら私はその四人のいるテーブルに行き、空いている席に座ったのだった。居心地がいい居酒屋なのに今日の居心地の悪さは半端ない。


「副島センセイは少し遅れるから先に始めておいてって」


「そう」


「葵もビールでいいの?」


「うん」


 これからのことを考えるとビールなんか飲んでいる場合じゃないけど、少しビールでの飲んでないと素面のままじゃ厳しい。とりあえず副島新が来るまではどうにか詳しい話は凌ぎたい。自分の中でまだ実感として湧かない。出張に行ってしまって、全く話してないからあれは夢だったのではないかとさえ思っている。


 同期六人はとっても仲がいい。仲がいいから、根掘り葉掘り聞かれるのは必至。副島新なら上手く躱すだろうけど私はそんな自信はない。

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