幸せそうな顔をみせて【完】
 副島新らしい言葉に私は苦笑した。ここで美辞麗句を並べるような副島新ではない。「一緒に居て楽なとこ」それって聞きようによってはどうなのかと思うけど、考え方を変えれば、副島新のように中々人を寄せ付けないような人にとっては最大の褒め言葉なのかもしれない。


「葵ちゃんと副島は合っていると思うよ」


 そんな男の同期の言葉にもう一人もニッコリと笑っていた。私も彼の言うとおり本当に一緒にいると楽だと思う。同期で一緒に居た時間が長いから、自分を取り繕う必要もない。それに自然体の自分でいられる。


「幸せになれよ」


「ああ」


 副島新のそんな言葉を聞きながら、本当に幸せだと思った。



 居酒屋を出たのはそれからしばらくしてからだった。


 一気に飲んだので、副島新も今日は酔っている。私はほろ酔い気分。この前の飲み会は少しの距離を空けて歩いていたのに今日は私の手は副島新の手に包まれている。結婚という形には拘らないけど、今は副島新と一緒に居たいから選んだ結婚という選択が間違ってない気がする。



 横を見上げると端正な顔がそこにはある。頭脳明晰なだけでなく持ち前の行動力で、いつもみんなの前を歩いている人。こんな凄い人を私はいつ好きになったのだろう。


 私は本当にいつ好きになったのだろう?いつ恋は始まったのだろう?


 それに明確な答えはないけど、ただ一つ言えるのは…副島新の『幸せそうな顔が見れた時』

 あの時に好きだと思った。
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