幸せそうな顔をみせて【完】
 そういって笑う副島新の顔を見ながら、私も自然と顔が緩む。一緒の時間を過ごすのは前と変わらないのに、それでも何かが違うのは私のずっと隠していた気持ちをもう隠す必要がないということだからかもしれない。


「そろそろ終わりだな」


 ランチコースはメインの舌平目の料理までがテーブルに届けられていて、後はデザートを残すのみとなっていた。メニューにはデザート盛り合わせとあるから期待はしてしまう。情報誌にもデザートの出来はいいという口コミでもあったから一段と楽しみだった。


「デザートをお持ちしました」

 そんな声と共に届いたデザートは口コミで持ち上げるほどではないものだった。

 コースに付いているデザートだから、明らかに量は少ないし、凄く技巧に富んだものでもない。

 チョコレートケーキの横に数種類のフルーツとバニラアイスクリームが添えられていて、お皿の上にはチョコレートとオレンジのソースでデコレートされているものの、特別というほどでもなかった。


 でも、それは一瞬で一蹴された。


 私はチョコレートケーキを少し口に入れてから言葉を失う。濃厚な味は見た目からも想像できた。ネットリとした甘さと濃厚さも想像出来る。でも、それはいい意味で覆させられる。


 見た目は普通の濃厚で生チョコの固まりのようなチョコレートケーキなのに舌触りがとても優しく、そして、後味がとっても軽いということ。

 
 小さいけど十分に楽しめるし、ランチのコースを締めくくるには十分な実力を持った一品だった。
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