幸せそうな顔をみせて【完】
 今日はごく自然に私の手を副島新の手に包まれる。それは私が副島新の彼女になって、今までとは違うからだと思う。ちょっとしたことでこんなにも関係が変わったのを感じた。


 手を繋いだ温もりをずっと感じていたい。温もりから感じる好きという気持ちを感じていたい。


 心に秘めていた思いも今は副島新の胸に届いていると思うと少しの恥ずかしさと嬉しさに包まれていた。


「葵が迷子になったら洒落にならないから」


 この年になって迷子も何もないと思うけど、それでも、副島新の手は温かくて、そのまま私も手を握り返した。


 ただ、手を繋いで少し引かれて歩きながら少し前を歩く肩を見ると、私の眼には綺麗な副島新の横顔が見えたけど、また表情からは何も読み取れない。


 それでも昨日の夜から一緒に過ごした時間が私に少しだけ勇気をくれる。寝てはしまったけど、私の中で大きく人生が動いた夜には間違いない。


「迷子になったら困るもの」


「俺が掴まえているから大丈夫」


 そんな自信に溢れた声は副島新らしいと思わずにはいられなかった。


 ショッピングモールの中をゆっくりと当てもなく歩いていると、色々な可愛いものが目に入る。あれこれも欲しくはなるけど、それでも自分が欲しいままに買うことは出来ない。私の部屋は狭く、荷物に溢れている。そんな中でこれ以上可愛らしいという思いだけで、物を増やすことは出来ない。
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