幸せそうな顔をみせて【完】
 副島新の部屋に行くことはこれから増えると思う。でも、だからと言ってそんな言葉に甘えて私が副島新の部屋に自分の私物を置くのはまだ早い気がした。昨日の今日で…いくら関係が変わったとはいえ、そんなに簡単なことじゃない。たがが、ガラスのメモスタンドだけど、私の中では踏ん切りがつかなかった。


 副島新の部屋に物を置いたりするのはまだ先のことだと思う。


「いらない」


「そっか」


 副島新はそれ以上は何も言わなかった。そのまま、雑貨ショップを後にすると、今度は副島新の方が足を止めたのだった。そこは広めのフロアに置かれた家具が置いてあるインテリアショップだった。ファブリック類も豊富で女の子が好きそうなものが並んでいる。


 綺麗なお皿やコップもあるのでトータルコーディネート系のセレクトショップなのだと思う。でも、この店は前に来た時にはなかったお店で、私が時間がなくバタバタしている間に新規オープンしたものだろう。


「こんな店が出来てたのね。ここが目的地?」


「いや、違うけど、少し見ていかないか?」


「うん」


 仕事の忙しさで寝るだけになっている私の部屋は殺風景だけど、もしも時間と心の余裕があるとしたら、こういう店の家具で揃えたら素敵だろうなと雑誌を読みながら思ったこともある。そんな夢のような光景が目の前に広がっている。トータルコーディネートの数々に目を奪われ、自分の住んでいる部屋を思い出し溜め息を零した。



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