幸せそうな顔をみせて【完】
 昨日から抱くとか散々言っていたのに、実際はこんなにも優しい。強引で俺様なのに、とっても優しい一面も持っている。それは仕事の場では知らなかった一面で強さの中にこんなにも深い優しさがあるのだと思った。知らない一面を知る度に私の中で愛が増えていき、溢れる。


 そして、溢れた言葉は…今までの私にはない言葉だった。


「私が手を繋いで寝たいかも」


 まだ少し熱があるのか私の口から零れたのはいつもの私では絶対にありえないくらいに甘えた言葉。口に出してからしまったと思ったけど、一度口から出した言葉は取り消せない。



 副島新は……少しだけ目を見開き、一度深呼吸して。それから、両手を膝の上でギュッと握った。何か考えるように空を一度見てから、苦しげな声を私に聞かせてくる。


「葵がそうして欲しいならそうする。でも、葵ってSな女だったんだな。俺の言葉聞いていたのか?」



 私がS?


 そんなことを言われたのは初めてだった。でも、さっきの副島新の言葉の中に何か私がSと言われる何かがあったのだろうか?私に副島新の思考回路が解明出来る訳でもなく…私はさっさと切り替えることにした。


「新ほどじゃないと思うけど、ねえ、シャワー借りていい?拭いてくれたのは嬉しいけど、やっぱり髪とかがべたつくの」


「俺に抱かれる準備?」

「ううん。気持ちよく寝る準備」


 そんな私の言葉に副島新は口の端を上げていた。


「やっと葵らしさが戻ってきた」
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