幸せそうな顔をみせて【完】
「早く上がってこいよ」


 そんな言葉と共に入ったバスルームは広かった。


 副島新の部屋は私の部屋とは比べ物にならないくらいに広い。それは玄関、リビング、寝室だけでなくバスルームも例外ではない。単身者用のユニットバスを使っている私からすると、同じ会社に勤めているのにズルいと思ってしまっていた。

 
 廊下のドアを開けて入ると、そこには脱衣所とバスルームに分かれていて、洗濯機の上には収納も充実していて、洗面台の横にはタオルの入った棚もある。タオルは群青色で揃えてあり、真っ白なバスルームに群青色のタオルなどのリネン類がよく映える。


 男の人の一人暮らしの部屋の部屋とは思えないくらいに整理整頓が出来ていて、自分の部屋の方が散らかっているかもしれないと思うほどの空間が広がっていた。洗濯物を入れると思われるカゴには何も入ってなくて、私が昨日借りたシャツもハーフパンツも入ってない。


 考えられるのは私が自分の部屋に戻った少しの間に全部洗濯を終わらせたのだろう。


「こういうとこも抜け目がないんだよね」


 天井に埋め込んであるダウンライトの光が優しくその整然とした空間を包んでいた。


 洋服を脱ぎ去り、頭からシャワーを浴びていると、少し熱めのお湯が私の身体を綺麗に流していく。シャンプーもボディシャンプーも借りて泡立ててから身体に乗せるといい香りがした。メンソールの爽やかな香りで、いい匂いと思う。でも、それは薬局でもよく売っているどこにでもあるボディシャンプー。たまに副島新からふわっと香る爽やかな香りがまさか薬局にあるものだとは思わなかった。

< 95 / 323 >

この作品をシェア

pagetop