幸せそうな顔をみせて【完】
「とりあえず洗おうかな」


 色々考えていても答えは見つからないし、これからのことを思っても仕方ない。こういう時の切り替えは早い方だと思う。私の部屋にあるユニットバスとは違う副島新のバスルームはとっても使い勝手がいいし、とにかく広い。初めて彼の部屋のバスルームを借りているのを忘れてしまいそうになるほど満喫してしまった。


 時間があれば、お湯を張りたいと思うくらいだった。最初の緊張はどこに行ってしまったのかと思うくらいにゆったりとしたバスタイムを楽しんだ。肌に当たりシャワーの飛沫を見ながらどのくらいの時間がたったのだろうかとふと思った。


 具合が悪くて熱のあった私が長風呂なんかしていいはずがない。もしかしたら副島新は心配しているかもしれない。ふと過った彼の横顔は、気持ちいい時間から現実に戻すには十分だった。


「ヤバい」


 バスルームからバタバタ出ると出ると、副島新のシャツに腕を通し、濡れた髪のままリビングに戻ると、真っ暗な部屋の中でソファに座り、テレビを見ている副島新の姿が目に入る。廊下に淡い光を放つダウンライトを背中に感じながら逆光になったリビングは副島新の身体をテレビの青い光が包んでいた。


 私が入ってきたのを気付いた副島新は私の方をそっと見ると立ち上がり、リビングに入った場所で立ち尽くす私の身体をギュッと抱き寄せる。


「遅かったな。倒れているかもしれないと思って心配した」

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