ご懐妊は突然に【番外編】
私の話しを聞いて田中は爆笑する。

「健気だなあ!匠は!愛いヤツめ!」

「からかっちゃダメよ?隠してるんだから」私はすかさず釘を刺す。

「稜も教えてあげたら?お料理上手なんだから」

確かに。

田中は苦手だけど田中の作った料理は絶品だ。

「…悪くない。匠に料理を教えるなんてちょっとゾクっとするな」

やっぱり変態だなあと思った。


「りょおくーん!」

英茉がこちらへ向かって転がるように走ってくる。

「かえってたのねー!」

そのまま、田中にダイブした。

世の中は不条理なもので、英茉は田中が大好きだ。

「何処が好きなの?」と聞いたら「かお!」と即答していた。どうやら面食いらしい。

田中は英茉をふわりと膝に乗っけて抱っこする。

「今日はおしごとのかっこうじゃないの?王子さまみたいでとっても素敵なのにー」

「スーツは窮屈だから好きじゃないんだ」

「どんなお洋服でもりょうくんはすてきだけど」

英茉が無邪気ウフフーと笑うと「ありがとう」と言って、田中はクスリと微笑む。

それから長い指で英茉の髪をそっと梳くと、絡まった枯葉をするすると器用に解いていく。

「案外、いい父親になるかもよ?」

その光景を見て、私は燁子さんにチラリと視線を向ける。

「だといいけど」

燁子さんは柔らかく目元を緩めた。
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