ご懐妊は突然に【番外編】
「田中のおじさん!」
そこへ泥だらけの圭人も戻ってきた。

どうでもいいけど、商店街の店主のような呼び名だ。

「ミニ匠、相変わらず小汚いな」田中は表情一つ変えずに言う。

「圭人はあっちいって!」

英茉は自分の縄張りを侵されないよう眉を釣り上げて牽制する。

いつもはおっとりした性格なのに男が絡むと怖くなる。

「おじさんは今Mac何使ってんの?」

「iMacだけど」

圭人は天に手を向けて肩を竦めた。

「古くね?俺は今iMacの5Kディスプレイだぜ。マジ画像とか目を見張るほど綺麗だかんね」

「相変わらず嫌なガキねー」

燁子さんは鼻の頭に皺を寄せる。

「それはお前の物じゃなくてパパのもんだろ」

「パパは出張が多いから、ほぼ俺が使ってる」

圭人が勝ち誇ったようにふふんと鼻で笑うと、田中は悔しそうに口を横に結ぶ。

ポケットからスマホを取り出すと、食い入るように画面を見つめる。

何度か画面をタップすると、突然ニヤリと笑った。

「たった今MacBookを買った」

そして勝ち誇ったようにニヤリと笑う

「徹底的に無駄を省いたスマートな造りで厚みは13.1mm、重量は920gで、高精細なRetinaディスプレイを採用した新製品だ」

ストアの店員か、と思うほど田中は饒舌にまくしたてる。

「おじさん狡い!」

「何が狡いんだ?俺は自分が稼いだ金で自分が好きな物を選んで自分で買ったまでだ。パパにMacを買ってもらったお前に狡いなんて言われる由縁はない」

田中、子供にも全く容赦なし。
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