ご懐妊は突然に【番外編】
「珍しいな、燁子は飲まないのか?」匠さんが尋ねる。

「妊娠してるからお酒は控えてるの」

さらりと燁子さんがご懐妊の報告をすると匠さんはアーモンドアイを大きく見開いた。

「それは…おめでとう」

匠さんも驚きのあまり、私と同じリアクションだった。

「稜もおめでとう」匠さんは田中のグラスに赤ワインを注いだ。

「アキに赤ちゃんが出来たのー?」

英茉は口の周りにべったりソースを付けて尋ねる。

圭人は関心がないようでローストビーフにがっついている。

「そうだよー英茉は男の子と女の子どっちだと思う?」燁子さんが尋ねると「男!」と英茉は即答した。

「きっとりょーくんそっくりなカワイイ男の子だよー」英茉はうっとりした表情で言う。

中身までそっくりだったら、そうも言ってられないだろう。子ども同士だったらきっと容赦ない。

「ねぇママ、クリスマスプレゼントも誕生日プレゼントもいらない。だから英茉は妹が欲しい」

英茉に潤んだ瞳でお願いされてしまった。

「赤ちゃんはね、お金で買えないんだよ。だから英茉も神様にお祈りしておくといいよ」

燁子さんの台詞に英茉は力強く頷いた。

「毎日寝る前にお願いする!」英茉はにっこり笑った。

「…だってよ、プレッシャーだな、匠」

田中が冷やかすように笑うと、匠さんは澄ました笑みを浮かべてお上品にワインを一口飲んだ。
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