ご懐妊は突然に【番外編】
お湯が張られたバスタブにゆっくりと身を沈める。

葛城邸にお泊まりすると、家事は何もしなくてもいいので楽ちんだ。

その上、夕飯は美味しいし、部屋も広くて綺麗なのでホテルにでも泊まっている気分。

寧ろ、ホテルよりずうっと快適かも。

なんてったって無料だしな。

全身の疲れをユックリ癒すと、私はお風呂からあがった。

寝る前の身支度を整えて部屋へ戻ると、匠さんはソファーに座ってビールを飲みながらテレビを見ている。

私は隣に腰を降ろして飲み掛けのビールを一口いただく。

そのまま匠さんの肩にそっと頭を乗っけて甘えてみた。

「おかえりなさい、あなた」

「ただいま、奥さん」

匠さんは私を抱き寄せて頭にキスをした。

「出張はどうでした?」

「疲れたよ、双子と遥に早く会いたかった」

「夜に飲み歩いてたから疲れたんじゃない?」

目を細め疑惑の視線を向けるが、「遥、俺は仕事でいってるから」と、キリっとした表情で異議申し立てられてしまった。

しかし、出張の際には夜な夜な飲み歩いてるという情報は私の耳にきっちり入ってきている。

匠さんの腹心の部下、総さま経由なだけに信憑性は非常に高い。

「…なら、いいけど」

私は匠さんの胸に手を当てて、唇を尖らせた。

ここで深く追求すれば、理詰めで反論してきて面倒くさそうだ。

「さ、クタクタだから、そろそろ寝るよ」

匠さんはリモコンでテレビのスイッチを消すと、重い腰をソファーから上げる。

私達はクイーンサイズのフカフカのベッドに並んで横たわった。

「おやすみ」私は小さく欠伸すると部屋の電気を消す。

今日は美味しい夕飯もたっぷり食べて、ワインも飲んだからよく眠れそう。

…が、しかし、そうは問屋が卸さなかった。
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