嫌いになりたい
「何聞いてんの。俺は『大人しくはないけど可愛い』って、ちゃんと言ったよ。ラビちゃんって気が強そうでちゃんと自分を持ってるように見えるし。人に弱みは見せない………だろ?」


繋がった親指の腹で、優しくあたしの手の甲を撫でる

ちゃんと話したのは初めてなのに、何でこんな一瞬であたしのことが分かるんだろう


「こんなトコで立ち話してるのも何だし、どっか入ろうか」


あたしの返事を聞くこともなく歩きだすサク


「ちょっ、待って!あたし、行くなんて一言も───」


手を引かれ慌てて断ろうしたのに、すぐに立ち止まってこちらを振り返った


「なっ、何───っ、ん」


突然唇を押し付けられ、それ以上言葉を続けることが出来ない

下唇をゆっくりと食まれる


「───ふ…」


頭の中がフワフワして、全身に鳥肌が走る


気持ちいい…


嫌悪感どころか、素直に気持ちいいと感じてしまった

チュッと音を立てて離れる唇


「ラビちゃん、目がトロンとしてる。気持ちよかった?」


指から温もりが離れたかと思うと、両頬を包まれる


「皆、見てるよ?」


「え…?」


不意にクリアになる視界

目の前でぼやけていたサクが、急にハッキリと見えた
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