嫌いになりたい
「───っ、最低!もう、二度と店に行かないから!」


「あ、そ。他にも居るから別に来なくていいよ。じゃ」


何かを言いたそうに顔を歪める女の人に、淡々と喋るサク


「───バッカみたい!」


そう捨て台詞を残して立ち去った女の人を、ただ黙って見送る


「巻き込んじゃってゴメンね」


優しい声が降ってきて、ふと我に返った


「帰れる?」


手を差し出されたものの、どこの誰かも分からない男の手は取れない


それなのに、いきなり舌まで………


さっきのことを思い出したら、腹が立ってきた


「…帰ります」


キッと睨むと、なぜかフッと微笑むサク

あたしの顔のすぐ横の壁に手をつき、あたしを覗き込んだ


「今度の金曜…」


反対の手が伸びてきて、あたしの頬を親指の腹でそっとなぞる


「今日と同じ時間、ここを出たところで待ってるから」


「は?」


「今日のお詫び」


何言ってんの、この人

…付き合ってられない
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