嫌いになりたい
※※※



「っはよ」


職場へ向かういつもの道

駅を降りて肌寒さに体を丸めて歩いていると、背中をポンと叩かれた


「あ、おはよー」


横に並んだのは、同期の永野透流(ながのとおる)


「お前、背中丸くなってんぞ」


「分かってるけど寒いんだもん」


まだ10月

なのに、今日は突き刺すような寒さ

つい昨日まで蒸し暑かったのに、一気に冬が来たみたいだ


「もっと着ろよ」


「分かってるって。今日、そこまで寒くなると思ってなかったから着て来なかったの。………失敗した」


眉を寄せて永野くんを見上げると

同じように困ったような表情をした彼の姿があった


「ほら」


フワッと肩に掛けられるセーター


「いいって!永野くんが寒くなっちゃうよ!」


「気にすんなよ。それに俺、これでも一応体育教師だから、こんなことぐらいじゃ風邪なんて引かねーし」


確かに言われてみれば、真冬でもジャージ一枚で校内を歩いている姿を見たような…


「何とかは風邪引かないって?」


「何とかは余計だろ」


顔を見合わせ笑う
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