嫌いになりたい
誰が誰だとか、どうでもいい

早く帰りたい


名前を聞いて、健太もあたしだって気が付いたはず


「んじゃ!今日の出会いにかんぱーい!…なんちゃって」


笑いながら音頭を取る幹事に、周りからも笑いがこぼれる

それに乗れず、グラスを持ったまま俯いていると


「ほら、宇佐美さんも。乾杯」


カチンと音がして、向かいからグラスを合わせる音がした

顔を上げると笑顔の健太


「やっとこっち向いた」


ニコッと笑う健太の頬に出来るえくぼが、あの時のままで

忘れたかったはずのあの時を思い出す


『亜弥の拗ねた顔、すっげー好き』


『ずっと一緒に居ような』


他の女子と喋っている彼に嫉妬して

泣きながら怒ったこともあった

だけど

彼はいつも指先を絡めた手をギュッと握って

優しい笑顔でキスをくれた


あの時の健太が、今目の前に居る───


健太が、あたしのことを覚えているのかいないのかは分からない

けれど場の雰囲気とお酒の勢いにテンションが上がり

最後には皆と一緒に楽しく笑いながら飲んでいた
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