elevator_girl
「小さい頃に戻ったみたい。」諒子は、楽しそうに笑った。
そういえば、視点は1mにも満たないから
幼い頃の視点、くらいだろう。
長く伸びたアルミニウム無塗装のボンネットが目前に伸び
彼方にちょこん、とヘッドライト、ノーズ・コーン。
1960年代へのノスタルジーが、そこにある。
深町は、諒子をパセンジャー・シートに収めて
自分も、ドライバーズ・シートに収まる。
ステアリング・コラムに、チープなプラスティック・ホルダーのキーを入れ
スロットル・ペダルを数回踏み込み、軽く、スロットルを開いたまま
スターターを回す。
軽快なルーカス・スターターの音が猫の声のように。
スロットルを微妙に加減すると、フォード853Cユニットは
爆発的に始動した。
ステンレス・エキゾーストが軽快な音を奏で
ツインチョーク・ウェーバー48φは猫撫で声のような
エンジンの息吹きを伝える。
旧式なエンジン・ユニットは全身を震わせ、車体にそれが伝わる。
生き物のようなレーシング・カー。それがロータス・スーパー7だ。
「楽しい自動車ですね。」と、諒子は楽しそうだ。