elevator_girl

「そうですか、やかましいかと思ったんだけど」と深町はにこにこと。

「いいえ、とてもいい音。音楽みたいに素敵。」と
諒子は、スロットルの開閉に連なって上下するエンジンの息吹を
全身で感じながら、そう言った。

松之はそれを傍観しながら、すこし残念そう。

轟音に気づいて、学生たちが見物に来た。
人だかりができると大変なので、深町は、ゆっくりとクラッチを切り
シフト・ノブを左上に入れた。
フォード・エスコートRSタイプミッションのこのマシンは、左上が1速だ。


「じゃ、行きます」と深町は、クラッチをつなぐ。
人垣の中に、夏名の姿もあった。


輝かしい微笑みで深町を見つめる。
深町も、微笑みを返す。

信じ合う者同士の、それは安定した心が示す微笑みだ........。

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