elevator_girl
深町は、ロータス・スーパー7のエンジンを
静かに掛け
メーター・パネル右手にあるトグル・スイッチで右にウィンカーを付け、
おもむろにシフトを1速に入れる。
じゃあ先生、と右で手を振りながら
スーパー7をスタートさせた。
藤野は、にっこりと手を大きく振りながら。
街路樹のポプラの香り、それと
フォード853cユニットから吐き出される
カストロールの匂いが混じり
ミントのような芳香を奏でた。
スロットルを踏むと、それらは一体となり
あたかも地上のジェット・マシーンのように
スーパー7は加速した。
「いい感じでしょ?あの先生。」深町は、上機嫌で諒子にそう言う。
スーパー・7のギアを、3速から4速に入れ
ツインチョーク・ウェーバー48Φをゆっくり開くと
フォード853cユニットは、猫撫で声のような音を
吸気管から発し、穏やかにクルージングに入る。
低い速度で走っていても、エンジンの息遣いが聞こえ
振動が、生き物の鼓動のように伝わってくる。
「そうですね。...でも、深町さんって...。」