甘い彼。
「はいどうぞ」


久しぶりの、手の込んだ料理。


一口食べる。


それは優しくて、暖かくて。


さっきの涙とは違う意味でまた涙が出た。


「う…おいしい…」


「そっか…よかった」


涙を流しながら食べる私に、奏さんと同じで頭を優しくよしよししてくる望月さん。


「望月さん…ありがとう」


「望月でいいよ、桃羽ちゃん」


「じゃあ!…じゃあ…私も…桃羽でいい…」


「ふふっ、わかったよ桃羽」


食器を片付けてくれる望月。


そこに奏さんが入ってくる。


「ん?ご飯食べたんだね…泣いた?目が赤い、おいで桃」


手を広げてさっきの優しい笑顔を見せてくる奏さん。


その胸に飛びつく。


「いい子いい子、望月とは仲良くなった?」


こくこくと頭を縦にふるとえらいね、とまた頭を撫でられた。


褒められたことなんてないから…嬉しいな。


「さぁ、またリビング行くよ桃、望月も」


いつの間にか桃って呼ばれてる。


でも、嫌じゃない…。
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