立花課長は今日も不機嫌

――――――――
 ――――――

「よかった。辞めちゃったのかと思ったわ」


プリマベーラの控室に入って早々、着替え途中の霧子さんの熱い抱擁に出迎えられた。
霧子さんの甘い香りが私を包み込む。

夕べの欠勤を辞めたものだと勘違いしたらしかった。


辞めなきゃならないことに変わりはないのだけれど、こうしてまたズルズルと来てしまう私。

霧子さんにそう言われると、嬉しい反面ますます言えなくなってしまう。

あの堅い決意はいずこへ……?


「この前杏奈を指名したお客さん、夕べも来てたのよ」


岩瀬さんだ。


「でも、杏奈がいないことを知って、そのまま帰っちゃったわ」

「そうでしたか……」


この前の夜、立花さんに奪い去られるなんていう変な別れ方になってしまったから、ちょっと胸が痛い。

謝りたいけど……今夜も来てくれるかな……。


「さ、早いところ支度しましょ」


私の両肩に手を置いた霧子さんは、私を大きな鏡の前に座らせた。

< 112 / 412 >

この作品をシェア

pagetop