立花課長は今日も不機嫌
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「杏奈ちゃーん、もう出られるー?」
控室に声が響いたのは、最終チェックをしている時のことだった。
いつ最後になるかも分からないから、それは入念に。
でも、わざわざお声がかかることなんてないのに。
もうすでに満席なのかな。
そんなことを思いながら「はーい」と返事をすると
「ご指名だよ」
霧子さんと顔を見合わせる。
「例のお客さんじゃない?」
「そうですね」
他に私を指名する人なんていない。
ウサ耳を装着して、霧子さんより早く店内へと出た。
岩瀬さんはどこだろう。
フロアを見渡していると、さっき控室に声を掛けたウエイターが近づいてきた。