立花課長は今日も不機嫌

「でも、」

「お願い!」


私の言葉を遮って、良樹さんが両手を合わせる。
断らせるつもりはないらしい。


「入江くんのことは、タクシー呼んだからとか言って先に帰ってもらえばいいわ」


都合のいい算段まで伝授する。

そして、その後も断る隙を与えることなく、良樹さんの敷いたレールの上を歩かされるがごとく、立花さんと二人きりになってしまったのだった。


預かったこの店の合いカギを握り締め、私と良樹さんが話している間に寝入ってしまった立花さんの隣に静かに腰を下ろす。


……困ったな。
立花さんが目覚めたときに私がいたら、どんな顔をするだろう。

絶対に不機嫌顔だ。

あまりにも簡単すぎる予想に、胃がキリキリと痛み出す。

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