立花課長は今日も不機嫌
――そっか。
パスワード、知らない……。
どうしよう。
私の心配をよそに、岩瀬さんは別の画面に切り替えると、キーボードを素早い動きでタッチしていく。
パスワード画面に再び戻ると、何やらローマ字と数字を入力し、一発でパソコンが立ち上がった。
「すごい……」
「や、やめてくださいよ」
思わず出た言葉に岩瀬さんが照れる。
この分だと、メールの復元もお手の物に違いない。
気の弱い営業マンにしか見えなかった岩瀬さんが、今日はスーパーマンのようにカッコよく見えた。
そうこうしている間にも、画面には暗号にしか見えないローマ字の羅列がいっぱいになり、岩瀬さんの指先は華麗にキーボードを舞い続ける。
何が起こっているのか私には分からないまま、時間が過ぎていった。