立花課長は今日も不機嫌
「私、分からなかったの……」
「……本気で言ってる?」
「恥ずかしながら……」
嘘でしょ? という顔をする沙月。
「杏奈は会社のことに興味がなさすぎなのよ」
――やっぱり。
言われるだろうとは思った。
確かに、社内の役員の顔はほとんどがぼんやりだし、存在しているらしい派閥もさっぱり。
誰と誰が付き合っているという色恋も、情報は耳を素通りしてしまう。
決して興味がないというわけではないのだけれど……。
「それで、その鳥塚専務がどうかしたの?」
「お店に何度か来てたのに、それが鳥塚専務だって気づかなかったの」
「お店って、バニーちゃんのお店に来てたの?」
一重には思えないほど大きく目を見開く沙月に頷く。