立花課長は今日も不機嫌
「ぼ、僕も同じです。それなのに、ついゆ、夢を見てしまって……。土壇場になって思い出せてよかったです」
照れくさそうに頭を掻く。
「ですから、今夜の約束のことは忘れてく、ください」
「岩瀬さん……」
屈託のない笑顔を浮かべる岩瀬さんに、掛ける言葉も見つけられないのだった。
「あらら!? 海人に杏奈ちゃんじゃないのぉ?」
場違いなほどに明るい声がしたかと思ったら、それは良樹さんだった。
今夜は、予想外の人物の登場が重なる夜だ。
腰をくねられながら近づいてきた良樹さんが、満面の笑みを浮かべる。
「こんなところで何してるの? あ! もしかして、これからお泊り?」
「ち、違います!」