立花課長は今日も不機嫌
「それじゃ、シャンパンでも……」
「シャンパンですね、かしこまりま――」
ウエイターを呼ぼうと視線を店内に泳がせたところで、嫌なものを見つけてしまった。
――た、立花さん!?
少し離れたテーブル席で、ジトっと湿気を含んだ視線を送ってくるお客。
それが、立花さんだったものだから、思わず立ち上がって大わらわ。
嘘!
どうして!?
ドクドクドクと嫌な音で高鳴る鼓動。
全身の血液が心臓へ大集合したような感覚だった。
何をどうしたらいいのか分からなくて、とにかく姿を隠そうとテーブルにあったアイスペールを持ち上げて顔の前にかざす。
そうしたって、私の身体が隠れるわけでもないのに。