立花課長は今日も不機嫌
頭隠して尻隠さずどころじゃない。
ウサ耳も尻尾も、黒の網タイツを履いて恐怖に震える足だって全部丸見えなのだから。
その状態のままストンと腰を下ろすと
「ど、どうかしたんですか?」
お客さんが心配そうに尋ねた。
「あ、いえっ……」
何事もなかったかのようにアイスペールをテーブルに戻す。
通りがかったウエイターにシャンパンの注文を済ませ、一つだけ大きく息を吸った。
「ほ、本当に大丈夫……ですか?」
「はい……」
そう答えたものの、鼓動が尋常じゃない速さで打ち付ける。
もしかしたら私の見間違いや人違いということもあるかも。
嫌な記憶が見せる幻影とか。
気持ちを落ち着けるためだけに、都合の良いことを考えてみる。