立花課長は今日も不機嫌

……と言っても、こんなに怖い目をして半ば脅されれば、岩瀬さんじゃなくても反論なんてできないに違いない。
それほどに鋭かった。


「行くぞ」


ボソッと告げ、私の手を強く引っ張る。
その力によろけるように足を出すと、もう一方の手が腰に回された。


――ひゃあっ!
思わず変な声が出そうになる。


「しっかりしろ」


私にだけ聞こえるように言われて、嫌でも背筋が伸びた。

幸い、腰に当てられた手はすぐに離れたけれど、手は握られたまま。

繋ぐというような甘い雰囲気では決してないものの、手と手が触れ合っていれば、どうしたって意識してしまう。


最初は冷たく感じた立花さんの手が、交じり合ったせいか私と同体温に変わっていて、それが、歩く速度に合わせて何故かドキドキと胸をはやらせた。
< 53 / 412 >

この作品をシェア

pagetop