立花課長は今日も不機嫌
慌てて目をそらして視線を彷徨わせていると、頭の上から声が降ってきた。
「“誓約書”」
「誓約書?」
「いいから書け」
拒否することは到底無理だと悟る。
ペンのキャップを外すと、それが万年筆だったことに気付いた。
よく見てみれば、重厚感といいデザインといい、ちょっとオシャレな万年筆だ。
これで、あの綺麗な字が書かれるんだ……なんて、全然関係のないことを考える私。
「……おい」
「あっ、はい……」
えっと……“誓約書”と。
「“私、佐伯杏奈は6月3日をもって、”」
“私、佐伯杏奈は……”
言われるがままに書き連ねる。