立花課長は今日も不機嫌

「……借金?」


立花さんの声のトーンが若干和らいだような気がした。
チクリと胸に痛みが走る。


「闇金にでも手を出したのか?」


それにはさすがに頷けない。


「いえっ」

「それじゃカードローンか?」

「ち、違います……」

「それじゃ何の借金だ」


――ど、どうしよう。
何の借金……?

自分の口から出しておきながら、その先が続かない。

借金を理由にした手前、今更違うとも言えなくて、自分の蒔いた種に首を絞められる一歩手前。
引くに引けない事態だ。

そこであることが頭を過る。


「――じ、実は……親の遺した借金が……」


それは、その場を逃げ切るためだけに吐いた史上最低の嘘だった。

上目使いで盗み見た立花さんは、なんとも言えないという表情をしていた。

< 61 / 412 >

この作品をシェア

pagetop