立花課長は今日も不機嫌
店員のうんちくも含めた商品説明を聞き流しながら、気になるのはそこだった。
デザインを確かめる素振りで値札を裏返す。
――えっ!?
きゅ、きゅ、きゅ……九万円⁉︎
思わず卒倒しそうになった。
傷つけたりしたら大変だ。
あまりの高級っぷりに、そーっと箱へと置く。
「こちらではございませんでしたか?」
「……あの……もう少しお手頃というか、優しい価格というか……」
庶民丸出しで恥ずかしい。
小さくボソボソと告げると、店員は一瞬だけ目を見開いたものの、すぐに笑顔に戻った。
「それでしたら、こちらはいかがでしょうか。ペリカンのスーベレーンでございます。価格的に抑えた商品ながらも、機能はモンブランに引けを取りません。万年筆の定番とでも言いましょうか」